【共通テーマ】 

国際・国家・コミュニティの変容

—変化する政治・法・公共政策―

季節を先取りした桜も盛りを過ぎようとしております。会員各位におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

さて、今年も無事、春の研究大会を獨協大学で開催することができるようになりました。これも会に関係する皆様のご助力の賜物と考えております。

今年の研究大会は、4年ぶりの統一地方選の直後ということもあり、特に「地方」や、「コミュニティ」といった、国家の下位文化に着目し、多くのパネルを企画することができました。思えば、この3年は、新型コロナ・ウィルスの対策に苦しめられ、日本の政治や社会が大きく変化してまいりました。4年前の統一地方選で住民に選ばれた、多くの首長や地方政治家がその対応にあたり、これまでの対策の中で有権者は、地方政治の重要性に改めて気づかされる瞬間でありました。「ノーマスク生活」が再び戻ってくるなど、コロナ対策の緩和が進む中、次の4年間、住民の声を代弁する地方政治の主役は、今後どんな困難と立ち向かうこととなるのでしょうか。

そうした地方の問題にも、大きな影響を及ぼしているのが、一年を過ぎても、いまだ出口の見えないウクライナ危機です。日本の隣国でもあるロシアが、「21世紀におけるヨーロッパにおける戦争」を始めることになるとは、だれが予想した事でしょうか。多くの人命を犠牲としながら、その「ウクライナ危機」は現在も継続しております。そしてこの「21世紀のヨーロッパにおける戦争」は、「第一次冷戦」以降、グローバリゼーションの進んできた世界に新たな分断を招き、「第二次冷戦」の到来というべき状況に、その溝を深刻なものとさせています。こうした中で、世界の安全保障環境も大きな変化を被ってまいりました。各国にとってどういった安全保障政策を採るかということは、喫緊の課題として立ち現れることとなったのです。

ヨーロッパにおいて「第一次冷戦」期に、中立を維持した北欧の2国であるスウェーデンとフィンランドが、西側の同盟である北大西洋条約機構(NATO加盟申請へと舵を切ったことは、この「第二次冷戦」の在り方を端的に表したものであるといえるでしょう。こうした世界の変化は、日本においてもその防衛政策の大きな変容をもたらしたことは会員の皆様の知るところです。そこにおいては「平和国家」であった、従来の日本の「国家の在り方」が変化してきているという見方もあるほどです。

こうした「国際」「国家」「コミュニティ」という政治・法・公共政策の対象領域の、現在の、大きな変化をどのように捉えることができるのか。そうしたヒントをこれらのパネルの報告から構想することができるのではないでしょうか。

それと関連し学会賞も、今回もこれら現代の課題に関連する各領域の代表者に受賞していただくこととなりました。今回の学会賞としましては、現代政治学会賞としては、日本における現代政治学の形成に寄与されてきた獨協大学名誉教授の白鳥令先生、現代法律学会賞としては、平和を欧州で構築してきたEU法の研究で名高い慶應義塾大学名誉教授の庄司克宏先生、現代公共政策学会賞は、地域におけるコロナ対策の先頭に立って感染症を食い止めてこられ、研究者としても中東の危機管理などに精通していらっしゃった埼玉県知事であらせられる大野元裕先生、そして報道学会賞は現在でも第一線で活躍され、国際、国内、コミュニティの各領域の政治、法律、公共政策の報道に貢献するところ大であった元共同通信社編集局長の後藤謙次先生にお引き受け賜りました。受賞者の皆様のこれまでの業績を顕彰もうしあげるとともに、ご講演を通じて、その高い知見を会員の共通の財産とさせていただきたいと存じます。

また、政治家のご講演も、今回も第一線の方にご登壇賜ることとなり、豪華です。現職の法務大臣として齋藤健先生のご講演を初日には賜ります。続く二日目は、野党第一党を率い政権交代を狙う、立憲民主党代表の泉健太先生に、その戦略をお聞きすることとなっております。それぞれ現代という時代を、どう分析されているのかお話し賜ることとなっております。こうした変化する世界に対して、日本のかじ取りである与野党のそれぞれの政治リーダーがどういったことをお話し賜るか、参加者におかれましては、非常に重要な示唆を得るものと思います。

こうした非常に歴史的にも意義のある今大会に、獨協大学において開催校をお引き受けいただきました開催校理事の玉井昇先生におかれましては、並々ならぬご努力を賜りましたこと、ここに篤く御礼申し上げます。

また、獨協大学の所在する埼玉県草加市からは山川百合子市長のご講演を賜ることとなりました。さらに金曜日のエクスカーションで、草加市役所を訪問することもご快諾賜りました。これを機会に地方政治、行政の現場についても、理解を深めることができれば幸いです

対面での学会開催が出来ますこと、これまでコロナ禍で耐え忍んできた会員皆様の自重の賜物と存じております。変化する時代に総合的に政治・法・公共政策を検討出来ますこと幸いに存じます。今年も多くの皆様のご参加を、春の獨協大学でお待ち申し上げております。

2023年 春吉日

 

日本政治法律学会理事長   白鳥  


大会プログラムは順次更新予定です。

5月27日(土)大会1日目

 

8:50-9:00

開会式

理事長挨拶:白鳥浩(日本政治法律学会理事長、法政大学)

開催校挨拶:玉井昇(獨協大学)

関連校挨拶:井上清美(姫路獨協大学学長)

 

9:00-10:30

【自由論題(政治)】

司会:杉田弘也(神奈川大学)

報告:笹岡伸矢(駿河台大学)「戦争・体制変動と女性参政権成立:日本、フランス、イタリアの比較」

  :吉田龍太郎(慶応義塾大学)「中道左派政党における『保守本流』言説の形成と展開」

 

討論:新川達郎(同志社大学名誉教授)

   丹羽功(近畿大学)

 

【自由論題(法律)】

司会:西山智之(日本大学)

報告:四條北斗(大阪経済大学)「刑罰法規の白地委任の限界について—ストーカー規制法における委任規定を素材に―」

  :上野幸彦(日本大学)「インターネット上の不適切な情報に対するプロバイダ等の削除をめぐって」

 

討論:林弘正(島根大学名誉教授)

 

【自由論題(公共政策)】

司会・討論:古橋エツ子(花園大学名誉教授)

報告:宮﨑一徳(参議院事務局)「こども政策をめぐる国会論議の分析」

  :中川豪(公益財団法人日本都市センター)「シンガポール・ジレンマ-政治史とメリトクラシーの狭間で-」

  :朝倉幹晴(船橋市議会)「2023年地方選挙のトレンド~日本一の大選挙区(人口約65万人)の中核市・船橋市議会議員選挙(定員50人、立候補約70人)結果分析~」

 

討論:杉谷直哉(山陰研究センター)

 

10:40-12:10

【英語パネル「Japan at Crossroads: Politics, Law and Public Policy」】

司会:Dr Tadashi Iwami (Hokkaido University)

報告:Dr Corey Wallace(Faculty of Foreign Languages, Kanagawa University)「A 50-year Break: Japan’s 2022 Defense Build-up Plan in Historical Context」

  :Mr Etienne Gagnon(Interfaculty Initiative in Information Studies, University of Tokyo)「Demographic decline and Politics in the Japanese countryside」

  :Dr Tadashi Iwami (Hokkaido University)「Japan-New Zealand Bilateral Relationship: From a Perspective of their Strategic Partnership」

 

討論:Dr Tadashi Iwami (Hokkaido University)

 

【NHKパネル】

司会:杉田淳(日本放送協会)

テーマ:「みんなの選挙」

 

12:15-13:15

【日本政治法律学会 理事会/昼食】

 

13:15-13:30

【総会】

 

13:30-16:30

【学会賞ご講演】

<報道学会賞>後藤謙次(政治コラムニスト/ジャーナリスト)「55年体制終焉から30年。加速する政治の貧困」

プレゼンター 白鳥浩(法政大学)

<現代政治学会賞> 白鳥令(獨協大学名誉教授、東海大学名誉教授)「学会賞を受賞して ―政治と政治学についての私の基本的考え方―」

プレゼンター 芦立秀朗(京都産業大学)

<現代法律学会賞> 庄司克宏(慶応義塾大学名誉教授、中央大学)「EU規制戦略の展望と日本の対応ーブリュッセル効果を踏まえてー」

プレゼンター 松野民雄(城西大学)

<現代公共政策学会賞> 大野元裕(埼玉県知事)「埼玉県の新型コロナウイルス感染症対策:その戦略と戦術  

プレゼンター 白鳥浩(法政大学)

 

16:40-17:40

【政治家ご講演】

講演:齋藤健(衆議院議員 法務大臣)「迎える正念場の10年」

司会・討論:島田敏男(NHK放送文化研究所研究主幹、元NHK解説副委員長)

 

討論:龍崎孝(流通経済大学副学長、元TBS解説委員)

   坂野喜隆(流通経済大学)

 

 

 

5月28日(日)大会2日目

 

9:00-10:30

【「統一地方選」パネル】

司会:宮﨑一徳(参議院事務局)

報告:中井歩(京都産業大学)「2023年大阪ダブル選挙の検討(仮)」

   佐藤亮司(地方公務員)「神奈川県相模原市の統一地方選挙に関する考察」

 

討論:竹内直人(京都橘大学)

   宮﨑一徳(参議院事務局)

 

【自由論題(法律)】※日本現代法律学会のみ9:00-9:50

司会:渡部朗子(高岡法科大学)

報告:谷口聡(高崎経済大学)「アイルランド終末期法制における『事前指示』の考察」

討論:山崎将文(京都橘大学)

 

【中国研究者パネル】

司会:段瑞聡(慶應義塾大学)

報告:劉星(山梨学院大学)「安全保障三文書と中国の安全保障戦略」

   賈鳳妍(杏林大学大学院)「現代中国農村集団経済における実力者についての研究――ソーシャル・キャピタ   

   ルの視点からのアプローチ」

討論:熊達雲(山梨学院大学)

 

10:40-12:10

「アジアを取り巻く国際環境」パネル】

司会:佐伯康子(東洋英和女学院大学)

報告:朱建栄(東洋学園大学)「『台湾』をめぐる日中の認識ギャップと衝突の危険性」

   宮本悟(聖学院大学)「岸田政権の対朝鮮半島政策」

 

討論:笘米地真理(衆議院議員秘書)

   後藤新(武蔵野大学)

 

【「西原春夫先生追悼」パネル】※日本現代法律学会のみ10:00-12:20 

司会:齋藤康輝(日本大学)

報告:高橋則夫 (早稲田大学名誉教授)「西原春夫先生・人と学問」

   只木誠 (中央大学)「法文化と比較法―普遍的なものと可変的なもの」(仮題)

   四條北斗(大阪経済大学)「現代型犯罪の規制立法と罪刑法定主義—ストーカー規制法をめぐって—」

討論:林弘正(島根大学名誉教授)

 

【(書評)パネル】

後房雄著『地方自治における政治の復権: 政治学的地方自治論』北大路書房、2022年。を読む

司会・討論:川野秀之(玉川大学名誉教授)

報告:後房雄(名古屋大学名誉教授、愛知大学教授)

討論:杉谷和哉(岩手県立大学)

 

12:15-13:00

【各学会理事会/昼食】※政治と公共政策は共通開催

 

 

13:15-14:45

【「2022年参院選」パネル】

司会:井柳美紀(静岡大学)

報告:井田正道(明治大学)「2022年参院選に現れた傾向に関する考察―投票率をめぐってー」 

  :岡田浩(金沢大学)「現職が選挙に強い理由-金沢市における意識調査データの分析-」

 

討論:岡本哲和(関西大学)

   芦立秀朗(京都産業大学)

 

【「ノーマライゼーションの理念」パネル】

司会:松野民雄(城西大学)

報告:清水勇人(さいたま市長)「さいたま市ノーマライゼーション条例」

  :斎藤康輝(日本大学)「ノーマライゼーションの理念と歴史」

討論:小林幸雄(玉川大学)

   飯塚智規(城西大学)

 

【ウクライナ危機と世界・日本】

司会・討論:玉井昇(獨協大学)

パネリスト:鈴木美勝(元時事通信解説副委員長/前「外交」誌編集長)「ウクライナ危機を考える:ジャーナリストの視点から(仮)」

 

14:50-16:20

【ヨーロッパ・パネル】

司会:下斗米伸夫(神奈川大学)

報告:三澤真明(日本大学)「イギリスにおけるヨーロッパ統合をめぐる二度の国民投票」

  :佐伯祥子(エクセター大学) 「ヨーロッパ系ユダヤ人とEU 」

  :黒木美來(駿河台大学)「欧州統合の生成期における『欧州運動』と連邦主義ー『欧州議会』創設をめぐる統

   合支持者の離合集散ー」

 

討論:桐谷仁(静岡大学)

 

【草加市長パネル】

司会・討論:髙橋正樹(高岡法科大学副学長、前高岡市長、元新潟県副知事)

報告:山川百合子(草加市長、元衆議院議員)「『だれもが幸せなまち 草加』を目指して」

 

16:35-17:35

【政治家ご講演】

講演:泉健太(衆議院議員 立憲民主党代表)「立憲民主党がつくる日本」

司会・討論:島田敏男(NHK放送文化研究所研究主幹、元NHK解説副委員長)

 

討論:磯山友幸(千葉商科大学、元「日経ビジネス」副編集長)

   松浦淳介(慶應義塾大学)

 

17:35-17:40

【閉会式】

次回開催校:山﨑将文(京都橘大学)