第1回研究大会 プログラム

共通テーマ:政治と法律の対話―混迷する時代の羅針盤を探して

理事長メッセージ

 

桜の花も咲き、梅の花も少しずつ開くようになってまいりました。皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。

 さて、このたび、「政治学」と「法学」の融合による新たなる知見の獲得を目指し、日本政治法律学会を設立する運びとなりました。現在、我が国、および世界の現実は混迷の度合いを深めているといわれます。そして、現実が混迷している以上に、「政治学」も、「法学」も、羅針盤を失い、混迷の時代を迎えているといわれます。そうした時代にあって、本学会が、一筋の理解の系(Leitfaden)を示す一助となることが出来ましたら幸いです。

 日本の法学部における教育は、諸外国にと比べて「遅れ」ているという批判がなされることがあります。それは、19世紀後半のドイツ国家学の影響を受け、政治学と法学が未分化で、同じ学部の中で教えられているということに批判の対象があります。現在、諸外国においては、通例、政治学は社会科学部ないし政治学部、法学は法学部とそれぞれ異なった学部で教育されております。しかし、政治学と法学を同じ学部で教えることは、果たして「遅れ」たあり方でしょうか。むしろ、政治という政策の「過程」のみを対象とする学問のみではなく、法律という立法の「制度」をも視野に入れて、教育体制が組まれていることは日本の誇るべき独自の特徴を示しているのではないでしょうか。本学会は、こうした「過程」と「制度」の融合により、政治や法律を理解する新たな視座を将来にわたって構築していくことを目標としております。

こうした考えの下、これまでは「政治学」は個々の政治学領域に細分化され、「法律学」も、また同様に個々の法領域に細分化され、お互いにあまり接点がありませんでした。そうした接点のなかった学会においても、政治学と法学を融合するという視点から、日本政治法律学会は設立されました。本学会の目標とするところに関しては、より詳しくは「日本政治法律学会の設立に向けて」をご参照いただけましたら幸いですが、主に政策の「過程」をその分析対象とする「政治学」と、法にまつわる「制度」をその分析対象とする「法学」は、日本においては、通例、同じ学部に研究者が属し、同じ学部で教育を行ってきたわけですが、その個々の学問的貢献、知見は、必ずしも共有はされてきませんでした。成立までの「過程」の理解なくして、成立した「制度」の理解はあり得ず、成立した「制度」の理解なくして、次なる成立を目指す「過程」の理解は存在しないといえるのではないでしょうか。

 純粋に、学問的な理論的な議論のみではなく、その「過程」や「制度」にまつわる多くの要素を、実践的に理解することが、この混迷の時代に求められているといっても過言ではないと考えております。そこで、研究者のみならず、現実の「政治」や「法」に携わる政治家、行政官、市民、そしてジャーナリストの方々とともに、多くの知見を集めて、新たな次元を切り開く試みをなしたいと存じます。

 2018年6月2日、3日に、日本大学において行われます日本政治法律学会2018年度春季研究大会におきましては、研究報告のみならず、実践的な学会であるための様々な工夫を行っております。

政策を実際に作成する政治家の中では、6月2日(土)におきましては現職の法務大臣であらせられます自民党の衆議院議員の上川陽子先生に、3日(日)におきましては先の衆院選で大躍進を遂げた立憲民主党代表であらせられます衆議院議員の枝野幸男先生に、それぞれご講演賜ることが決定しております。また、学会賞には長年、報道の現場から、警世のメッセージを発信してこられた中日新聞社の元東京本社論説主幹、元専務取締役東京本社代表の宇治敏彦相談役東京本社特任論説委員が受賞され、ご講演を賜る予定です。

 さらに、日本の政治学・法学のこれまでの歩みと、将来の学問の在り方をつなげるという意味で、政治学・法学の発展に貢献された、多くの高名な研究者の方のご参加も予定されております。特に本学会では、専門的な各学問領域の学会の理事長を経験された学会顧問の御登壇もございます。いくつかの例を挙げますと、2日(土)におきましては、「21世紀新時代の展望と課題」と題しまして、北欧地域研究の岡澤憲芙早稲田大学名誉教授、行政学の中邨章明治大学名誉教授、比較政治学の河田潤一神戸学院大学教授、公共政策の新川達郎同志社大学教授から、それぞれの学問領域の現在の位置と、現代の課題に関してご報告を賜ることとなっております。

 研究者のみならず、政治家、ジャーナリストの方々の参加をもちまして、混迷する現代の羅針盤を探して、その理解に少しでも近づいていきたいと存じます。日本、および世界の「政治」の過程、および「法」の制度に関心のある方の多くの参加を期待しております。日本大学でお目にかかれたら幸いです。


6/1(金) エクスカーション

13:00~ 現代公共政策学会理事会(法政大学大学院棟)

15:00~ エクスカーション(参議院、弾劾裁判所見学)


6/2(土) 研究大会1日目(日本大学)

8:50~9:00

 開会の辞:齋藤康輝(日本大学・日本現代法律学会会長)1011講堂

 

9:00~10:00

日本現代政治学会「太平洋をめぐる政治」 1011講堂

 司会・討論:山本 啓(東北大学名誉教授)

 報告:亀田晃尚(海上保安庁)

     「東シナ海の石油と鄧小平の協調姿勢ー日韓共同開発に着目して」

    杉田弘也(神奈川大学)

     「執政府と立法府の重複部分:オーストラリア連邦憲法58条の意味と潜在性」

 

日本現代法律学会「民法パネル」 1041講堂

  司会・討論:松野民雄(城西大学)

  報告:金光寛之(高崎経済大学)

      「成年後見制度の現状と課題」

 

10:10~11:10

日本現代政治学会「日本政治史の再検討」 1011講堂

  司会:季武嘉也(創価大学)

  報告:佐賀香織(フェリス女学院大学)

      「戦時体制下における三木武吉」

     吉田龍太郎(亜細亜大学・慶應義塾大学)

      「井出一太郎の政治資源と思想形成」

  討論:奥健太郎(東海大学)

     小山俊樹(帝京大学)

 

日本現代法律学会「オセアニアの憲法政治」 1041講堂

  司会・討論:玉井 昇(帝京大学)

  報告:石見 禎(Institute of the Pacific United(New Zeland) )

      「ジェシンダ・アーダーン政権下のニュージーランド」

 

11:10~11:40

日本政治法律学会 共通理事会 本館181教室

 

11:50~13:30

【学会賞】 1011講堂

  報道学会賞:宇治敏彦(中日新聞相談役)

       「日本の活路は何処に」(1960年代と比較しつつ)

  現代政治学会賞:猪口 孝(東京大学名誉教授)

       「日本における政治学・国際政治学・比較政治学の発展と展望」

  司会:白鳥 浩(法政大学)

 

13:40~16:00

【共通論題】「21世紀への視座:研究と課題」 1011講堂

  司会:岡澤憲芙(早稲田大学名誉教授)

  ご登壇:河田潤一(大阪大学名誉教授)

       「社会基盤を編み直すーIAF(産業地域事業団)の思想と行動を中心に」

      新川達郎(同志社大学教授)

       「行政学・公共政策学・地方自治論の展望:これからの研究課題」

      岡澤憲芙(早稲田大学名誉教授)

       「A Leap in the Dark 21世紀の政策を考える:前例のない発想を」

 

16:10~

【共通論題】ご講演:上川陽子(法務大臣)

 「持続可能な開発目標(SDGs)と法務行政ー法の支配と『司法外交』」

  司会:片岡寛光(早稲田大学名誉教授)

  討論:白鳥浩(法政大学)齋藤康輝(日本大学)

 

18:30~20:00 

懇親会

 ホテルメトロポリタンエドモント 2階「波光」

 〒102-8130 東京都千代田区飯田橋3丁目10番8号

  (http://www.edmont.co.jp/access/

 懇親会費:10,000円


6/3(日) 研究大会2日目

9:00~10:30

【共通論題】ご講演:枝野幸男(立憲民主党代表) 241講堂

「立憲主義とは何か」

  司会:川野秀之(玉川大学名誉教授)

  討論:安達宜正(日本放送協会)林弘正(島根大学名誉教授)

 

10:40~12:00

日本現代政治学会】地方政治の新動向 241講堂

  司会:木村哲也(衆議院)

  報告:清家あい(港区議会)

      「母親たちと連携し待機児童問題に挑む」

     朝倉みきはる(船橋市議会)

      「無党派市議としての取り組み&船橋市議会改革・情報公開の歴史と現在」

  討論:藤本一美(専修大学名誉教授)

     丹羽 功(近畿大学)

 

【日本現代法律学会】アジアの憲法政治 242講堂

  司会・パネル趣旨説明:小林幸夫(玉川大学)

  特別報告:下條芳明(朝日大学)

        「新アジア立憲主義とは何か?-タイ憲法裁判所の創設を素材としてー」

 

12:00~12:30

日本現代政治学会理事会 222教室

日本現代法律学会理事会 222教室

 

12:30~12:50

日本政治法律学会総会 241講堂

 

13:00~14:10

【日本現代政治学会】国際交流パネル 241講堂 (使用言語:中国語)

  司会:朱 建栄(東洋学園大学)

  報告:上海国際問題研究院アジア太平洋研究センター副研究員)

     「试

     黎磊同済大学政治と国際関係学院准教授)


14:20~15:30

【日本現代法律学会】日本国憲法の将来  242講堂

  司会:齋藤康輝(日本大学)

  報告:成瀬トーマス誠(国士舘大学)

      「日本国憲法のこれから~憲法改正、分断、架橋~」

      

【日本現代政治学会】2017年衆院選とは何だったのか?  241講堂

  司会:中井 歩(京都産業大学)

  報告:岡田 浩(金沢大学)

      「政府役職就任と個人投票ー石川1区の分析」

     岡本哲和(関西大学)・石橋章市朗(関西大学)

      「2017年衆院選における若者のインターネット利用ー意図と有用性」

     芦立秀朗(京都産業大学)

      「立憲民主党なき三つ巴の選挙ー京都府選挙区の事例から」

  討論:井田正道(明治大学)

     中井 歩(京都産業大学)

 

16:10~17:40

【日本現代政治学会】「18歳選挙権」とその影響  241講堂

  基調報告後にラウンドテーブル

  基調報告:久保 隆(日本放送協会)

      「18歳選挙権と急増する期日前投票」

  司会  :杉田 淳(日本放送協会)

  パネリスト:青木栄一(東北大学)

        伊藤恭彦(名古屋市立大学)

        大谷基道(濁協大学)

                        桐谷 仁(静岡大学)

        久保田崇(立命館大学)

 

16:30~17:00

日本現代法律学会】特別講演  242教室

  司会:中村 良(日本大学)

  報告:清水勇人(さいたま市長)

      「絆をつなぐ~さいたま市長からのメッセージ」