憲法改正と日本政治

 

日本政治法律学会理事長

法政大学教授

白鳥 浩

 

 2018年9月20日に行われた自民党総裁選で、安倍晋三首相が三選を果たした。安倍首相は、その後のスピーチで憲法改正に強い意欲を示したのであった。

 現在ほど、憲法改正に関して現実味を帯びて語られている時代は存在しない。

 かつては、憲法改正に関しては、第一に法学の対象である「制度」面では、その要件とされる国民投票に関する規定が整備されていないために実質的に不可能であり、第二に政治学の対象である「過程」面では、国会における衆参両院において、改憲勢力が三分の二を超えることはなかったため、その実現性はほぼないものと考えられ、実際には日本国憲法が改正できないということは広く信じられてきた。

 そこで「改正できない憲法」という特徴から、「不磨の大典」とされ、憲法の無謬性さえ神話化されて語られてきた。確かに、現在の日本国憲法において、人類共通の理想とすべき規範を示しているという尊い側面があることは否めない事実である。また、時代の変化の中で、すべての条文が、その風雪に耐えられるものであるかという点に関して、も多くの議論が提起されてきたことも事実である。

 現実の時代が展開する中で、「制度」面では、国民投票法が整備され、「過程」面では、2012年以降の自公の政権奪還、そして一強他弱と呼ばれる状況の中で、改憲勢力が衆参で三分の二をしめるという大きな変化が生じた。すなわち憲法改正の前提となる「制度」面、「過程」面における条件に関しては、すべて乗り越えられている状況が現出したのである。憲法改正は、その気になればいつでも行うことが出来ることとなった。

 憲法改正においては、護憲、改憲の現象のみに焦点が絞られがちである。しかし重要であるのは、改正するか、しないかということではなく、むしろ改正するなら「どのように」改正するのか、改正しないなら「いかにして」維持していくのか、という内容面に関する検討であろう。こうした検討が、現在以上に求められている時代はない。

 これらの問題は、まさに「制度」と「過程」、法学と政治学の結節点に存在する。こうしたわれわれに突きつけられたアクチュアルな問題に対して、政治学、法学、政策学のそれぞれの第一線の研究者、ジャーナリスト、政策実践者、そして学生とともに課題の共有をはかり、世界の中、そして歴史の中における、今後の日本政治の座標軸を考察する。